- 民法の記述問題(一行問題)の対策方法
- 民法の記述問題(事例問題)の対策方法
- 民法の記述対策でおすすめの参考書
これらのことについて詳しく解説しています。
元裁判所書記官、現県庁職員。
大学時代は、not法学部。
新卒時の公務員試験では、財務専門官と都庁の記述問題で「民法」を選択し、両方で最終合格をいただきました。
また、裁判所の内部試験である「書記官試験」でも、民法の事例問題がありましたが、今回紹介する対策方法を実践することで、一年目から合格することができました。
民法の事例問題を選択する人って少ないと思います。
やっぱり憲法の方が人気です。
でも、解き方、勉強の仕方、最適な参考書を知ることで、民法の記述問題は誰でも簡単に得点できます。
暗記することが多い憲法よりも確実に簡単です。
今回紹介する勉強方法で、法学初心者でも、公務員試験と書記官試験の民法の記述試験で成果を残すことが短期間で出来ました。
その方法と参考書を紹介するこの記事を読んでもらえれば、民法の記述が書けるようになりますよ。
それでは解説に入っていきます。
目次
【民法】専門記述が出題される試験
- 国家総合職
- 国税専門官
- 財務専門官
- 都庁
メジャーどころはこんな感じです。。
国家総合職は、特別な対策が必要なので、今回のこの記事では省略させていただきます。
各試験の民法の記述問題の特徴を知るために、過去問を少し見てみましょう。
【国税専門官・財務専門官】
平成30年度
次の事例を読み,以下の問いに答えなさい。なお,(1)と(2)は,それぞれ独立した問いであり,
相互に関連しないものとする。
[事例]
平成 29 年5月4日,Xは,Aから土地甲を無償で譲り受けた際に,贈与契約を原因とする甲
の所有権移転登記手続に関する事務を友人であるYに委任した。
このため,Yは,Xの実印,印鑑証明書,甲の権利証を所持・管理することとなった。
その後,自己の事業が不振で生活にも窮するようになったYは,平成 29 年7月 10 日,Xの実印を無断で利用して契約書を作成し,印鑑証明書を提示した上で,自己をXの代理人として,X所有の甲を 5,000 万円でZに売り渡した。
Zは,甲にマンションを建築して賃貸経営を行うことを予定しており,平成 29 年7月 20 日,甲の土質調査や測量を業者に依頼して行い,総額で 200 万円の費用を支出していた。
なお,Zは,Yが甲についての本件売買契約に係る代理権を有していないことを知らなかった。
(1) Zは,Xに対し,どのような請求をすることができるかを論じなさい。
(2) Zは,Yに対し,どのような請求をすることができるか。Zの請求に対するYの反論も含め
て論じなさい。
令和元年度
次の事例を読み,以下の問いに答えなさい。
[事例]
Xは,Yとの間で,自己が所有するマンション一戸(以下「甲」という。)をYに賃貸する旨
の契約(以下「本件契約」という。)を締結し,甲を引き渡した。
本件契約では,賃料は月額 10万円,賃貸期間は2年間,目的は居住目的と定められた。
Xは,本件契約を締結するに当たって,Yに対し,転貸をすることを禁ずる旨を告げ,契約書
にもその旨が明記されていた。他方で,Yは,Xに対し,実家で単身で暮らしている母親を介護
のため呼び寄せて同居する可能性があることを告げ,Xはこれを了承した。
Yの叔母であるZは,英会話スクールの開業を考えていたところ,立地・間取りともに適切で
あった甲に興味を持ったため,「賃料は月額 12 万円を支払うので,甲を英会話スクールに利用さ
せてほしい。あなたの母親の介護は私の娘に任せればよい。」とYに頼み込み,YはXに無断で
これを了承した。
現在,Yは甲とは別のマンションに居住しており,Zは,甲に単身で居住しながら,甲の一室
を用いて英会話スクールを営業している。
(1) Xは,Yに対し,本件契約を解除し,賃貸借契約の終了に基づく甲の返還請求をしようと考えている。Xの当該請求の可否について論じなさい。
(2) 仮に,(1)の主張が認められない場合,Xは,Zに対して,直接賃料を請求することができるかについて論じなさい。
また,かかる請求をすることができるとした場合,その金額はいくらかについても論じなさい。
【都庁】
平成30年度
債務不履行による損害賠償について,意義,損害賠償の範囲,損害賠償の範囲の特則を,それ
ぞれ説明せよ。
令和元年度
消費貸借の意義について述べた上で,その成立要件及び効力について,それぞれ説明せよ。
公務員試験の民法の記述問題は、一行問題と事例問題の二通りの出題があります。
そして、都庁では一行問題、国税財務では事例問題が出題されることがわかります。
今回は、一行問題対策と事例問題対策の二つに分けて、勉強方法を紹介します。
【民法】専門記述の勉強法(一行問題)
一行問題は、覚えているか覚えていないか、それだけです。
言ってしまえば、択一の知識があれば答案を書くことができます。
ですので、一行問題のために、新たに民法の参考書を購入する必要はありません。
(正直なところを言えば、一行問題に特化した民法の参考書はありません。)
択一試験が出来ても一行問題が難しく感じる理由
私も、受験生の時にこんな気持ちになっていたので、気持ちは痛いほどわかります。
択一の知識だけでは答案が書けないのが、専門記述試験の嫌なところです。
なぜ、択一の知識で記述が書けないのかは、択一試験と記述試験の解き方に違いがあるからです。
択一試験
⇒誤りの選択肢を探す
記述試験
⇒正しい内容を書く
択一試験では、五つの選択肢から一つだけ正解の選択肢を選ぶだけす。
それも、他の選択肢の間違いをさがせば解けます。
こういう特徴があるため、択一試験は完璧な知識を有していなくても、回答することが可能です。
言い換えれば、曖昧な知識でも大丈夫なんですね。
一方で、記述試験は定義などを正確に書く必要があります。
択一試験用の曖昧な知識のままでは、解くことができません。
その事を知った上で対策する必要があります。
一行問題の勉強方法
勉強方はシンプルです。
民法の各テーマに関する定義や趣旨などを正確に覚えることです。
覚え方として、一番効果的なのは、答案構成をノートにまとめる方法です。
ただ、択一試験の勉強もあるので、民法の記述対策、しかも、一行問題のためにそこまで時間をかけられないですよね。
そこで、おすすめなのが、参考書を使って暗記していく方法です。
参考書は重要な知識がコンパクトにまとめています。
そして、説明の流れも、定義⇒趣旨⇒論点や判例などのように、そのまま記述の答案でかけるようになっています。
参考書を読み進めながら、定義や趣旨、論点などを参考書を見ずに、そらで言えるか試していく感じで勉強していきましょう。
このように勉強することで、択一の理解もさらに深まって行きます。
一石二鳥ですね。
【民法】専門記述の勉強法(事例問題)
事例問題に苦手意識を持っている人は多いのかもしれません。
でも、個人的には一行問題よりも簡単です。
その理由と対策方法を解説します
事例問題は出題される論点が決まっている
事例問題は出題される論点が決まってるので、対策が簡単です。
- 通謀虚偽表示
- 錯誤
- 物権変動
- 解除
- 賃貸借
他にもありますが、頭で考えないと解けない問題がよく出題されます。
事例問題を出すからには、知識で答えられる試験にはしません。
重箱の隅をつつくような細かい知識が求められるテーマに関しては出題されません。
知識を書きだす答案ではなく、論じさせる答案を書かせます。
そして、受験生に論じさせるために、出題者は条文の解釈が問題となっているテーマに関する問題を作成します。
例えば、民法177条の「第三者」ですね。
第三者ってどこまで含まれるの?、というように、「第三者」の解釈が物権の中で大きなテーマとして扱われています。
177条の第三者のように、解釈が問題となっている部分は、出題者としても問題が作成しやすいです。
論じさせる内容が豊富に含まれているからですね。
こんな感じで、事例問題で出題される分野は、だいたい決まっています。
頻繁に出題される分野に関する答案構成をあらかじめ考えておけば、民法の事例問題は怖くありません。
事例問題の勉強方法
では、具体的な勉強方法ですが、事例問題は解き方(お作法)があるので、まずはそれを身に着けましょう。
その解き方とは、どんな問題が出題されても次の流れで解くことです。
問題提起⇒規範定立⇒あてはめ
問題提起とは、出題された問題の中で論点となるところを抜き出し、それに対応する条文で問題となるところを書きだすことです。
そして、その条文で問題になるものについて、解釈を抽象的に論じます。
これが規範定立です。
最後に、抽象的に論じたものに対して、問題文で与えられている具体的事実を当てはめます。
簡単に説明しましたが、民法の事例問題はどんな問題でもこの流れで解くことができます。
そして、事例問題の勉強方法としては、この問題提起⇒規範定立⇒あてはめの流れを暗記していきます。
いわゆる「論証」と言われるやつを覚えるわけです。
よく出題されるテーマに関する論証を出来る限りの用意しましょう。
本番はこの論証を繋げて行くだけで答案を作成することができます。
参考となる問題集から拾い上げて、まとめていきましょう!
【民法】専門記述対策お勧め参考書
最後に、おすすめの参考書を一行問題と事例問題に分けて紹介します。
一行問題のおすすめ参考書
一行問題については、先ほどもいったように、択一試験のために今使用している参考書を使用して構わないです。
いつも使用している参考書だと慣れているので、暗記しやすいでしょう。
もし何かお勧めを、ということであれば、予備校の授業で使用している参考書がおすすめです。
予備校が長年それを使用して指導しているだけあって、内容としては十分です。
そして、コンパクトにまとまっているので、一行問題対策としてはうってつけです。
なかでも、おすすめなのがTACの参考書です。
いろいろな予備校の参考書を見ましたが、最も一行問題の専門記述にも対応できる内容となっています。
私もこれを使用して勉強していました。
こんの参考書を暗記して、本番ではそれを吐き出すだけで、民法の一行問題では合格答案を作成することが出来ました。
事例問題のおすすめ参考書
事例問題はこれ一択です。
司法書士試験用ですが、かなりお勧めです。
- 主要論点を網羅している
- 論証が初心者でもわかりやすく、暗記しやすい
- 答案例が秀逸で、事例問題の解き方を身に着けられる
おすすめポイントはこんな感じです。
一番のお勧め理由は、民法の主要論点をほとんど網羅していることです。
これ一冊で公務員試験の事例問題なら対応することが可能です。
さらに、答案例が秀逸であり、答案例を読み込むことで、事例問題の答案作成の基礎を身に着けることができます。
答案の中で使用されている論証も癖がなく、初心者でも使いまわせるものとなっています。
記述試験対策の参考書には、作者の癖が強くて初心者には参考にならないような答案例があったり、答案例の論証もやけに難しい言い回しが使用されているものがあります。
公務員試験で民法の記述試験を受けようと思っている人は、おそらくほとんどが今まで民法の記述試験を解いたことがない人だと思います。
そんな人が難しい答案例が記載されているものを読んでも、やたら勉強に時間がかかるだけです.
その点、この参考書は、簡単な言い回しの答案例が載っていますが、レベルが低いわけではありません。
答案例をそのまま暗記すれば試験でも十分対応することができる内容となっているので、初心者にはかなりお勧めの参考書です。
参考書選びに迷っている人には、ぜひ手に取ってもらいたいと思います。
また、司法試験となっていますが、こちらの本でも十分対策できます。
さきほど紹介した本とは違い、こちらは論証カードという形で、論証が豊富に載っています。
論証だけをいっぱい知りたいという人はこちらのほうがいいかもしれません。
最後に
民法の専門記述は、一行問題と事例問題ともに、択一対策の延長で勉強してもらえれば大丈夫です。
それに加えて少しだけ、答案を書く際のお作法だったり、正確な知識が求められるだけです。
そのことを理解して勉強すれば、本試験では余裕で合格答案が作成できます。
今回紹介した勉強法と参考書を参考にしてもらって、民法の専門記述試験を頑張ってほしいと思います。